むりむりカタツムリ

着地点がわからなくなった理系大学生

夢買い

今日、就活エージェントに「自己分析は自分が経験してきたことと将来自分が仕事に就いたときにそのミスマッチをなくすためだよ!」なんて、入社一年目であるという私と同い年の彼がどこかの就活雑誌で見つけてきたフレーズであろう言葉を淡々と話していた。挙句の果てには私が志望している業界でも職種でもない会社の雑誌を持ってきて(確か人材派遣型SE)キラキラした目で「こんな会社どうですかね!○○さん(私)にぴったりの職業だと思いますよ!」と言っていた。どんな経緯で彼がその人材派遣会社に入社して仕事をしているかわからないが、最初はなんで人材サービスやってるお前がSE語ってんだよ!ふざけんじゃねぇ!!!と思っていたのだが、彼の真剣なまなざしにまんまとやられ選考を受けることになった。(断れない男)

 

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就活において自分の軸を作成する、それは収入面、福利厚生、勤務地、残業時間、、、

数えだしたらきりがない。だからこそ、的を絞って優先度を決める。世の中には多種多様な仕事先や職種がある。こんな短期間の中でそれを自分の中に落とし込み、咀嚼するというのは私にとって簡単なことではなかった。なので、まず逃げ道を無くすことから

考えようと思った。これは私の偏見であるが、一次産業は頭を使わなくて済むし、五体満足の体があれば誰にだってできると考えていた。確かに畜産や農業、漁業というのは我々にとって必要不可欠なものであり、なかったら困る。だが、大学を出てまでやることではないと考えていたために、自分一人がやらなくたって誰かがやってくれる...その思いが嫌だったのだ。職業選択の自由があるのに、なぜ自分から潰さないといけないのか。それは自分にとって否定的で必要もないことなのか。という邪念を捨てるために酪農インターンシップにお世話になった話をしたいと思う。

 

舞台は鹿児島。どーーんと構えた桜島を背に研修先があった。5泊6日で具体的には牛の搾乳や、繁殖や清掃、子牛の世話が主な仕事体験であった。話には聞いていたことなのだが、どこへ行っても糞まみれである。生き物を相手にしているため当たり前のことなのだが、かなり臭いがきつくどこで行っても服に臭いがついた。起床が午前三時半ととても早く、臭いと相まって慣れていない仕事をしたせいか常時頭がくらくらしていた。それでも寝床を確保して、食事までごちそうになってもらってる会社への恩義と、わざわざ来たからには何かをつかんで今後の人生の糧にして帰りたいという思いから仕事を最後までこなすことができた。

 

そこで一番感じたのが人の温かさである。

仕事が終わると私に対して社員さんが

「○○くん、お疲れさま!ジュースなにのむ?」

と声をかけてくれたり、

頭いてぇと少しチラッと(誰かに聞こえるようにではない)心の声が漏れただけなのに、自分の宿舎まで戻って

「これ!バファリン!!頭痛いんでしょ?大丈夫?無理しないでね。」

と気を使ってもらった。

また仕事終わりには仲良くなった社員さん(Aさんとする)とお話ししていて

「自分の農場を継いで規模を大きくして親を楽させてあげたいんだ!」

と今後縁もないかもしれないインターンシップ生に夢の一つを打ち明けてもらった。

 

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そんな機会から約三か月が過ぎた。

今になってやっとその行動や考えの素晴らしさに頭が上がらなくなった。

なぜなら、インターンシップに行ったりOB訪問をしているが、Aさんのように自信をもって夢を誰かに語れるような人に出会えていない。他人に自分のことをずかずか話してくる距離感が近いは、もともと結構好きで、上辺だけの生産性のない話をしてるくだらない時間よりもよっぽど楽しい。

酪農なんて親がもともと経営していてそれを子供に継がせてるだけだ!そんなの親のエゴだ!!と思う人も多いかもしれない。だけど、自分にとっての最善策を見つけ、自分が自分らしく生きていけるのが最善策であるんじゃないかと最近思った。そのために会社を辞めて転職したり、新しい自分に出会ってみたり、そういった手段なら、今後自分も最初から諦めていたものを掘り返してやってみよう!と思った。

社員さんの人となりの良さは一朝一夕で会得できるものではなくて日ごろからの行動や思想、振る舞いなどによって変わってくるもので、面接なんて普段だらしない学生が眼鏡外して、ワックス付けて、普段着慣れていない革靴とスーツを着たやつが少しうまぶって話したところですぐに化けの皮がはがれてしまう。と感じたので少しずつ生活面も勉強面も改善していかないといけないと考えた。

 

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逃げ道を塞ぎに行ったつもりで逆に選択肢が広がり、その先での出会いや経験は決して否定できるものではなかった。「酪農っていいよなぁ牛さんと仕事したいなぁ」と今や考えるまでになった。いろんな選択肢がある中で取捨選択していくのは難しいけど、今は自分ができる範囲で頑張っていきたい。きっとヒントはそこら中に埋まっているから。

 

 

{牛さんギャラリー}


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