むりむりカタツムリ

着地点がわからなくなった理系大学生

呪縛と束縛

着信があった。プルルルル。

相手は高校の時付き合っていた人。

別れてからは付き合いが減り、たまーーに「元気?」と

当たり障りのない会話する程度だった。

正直、あまり気は進まなかった暇だったので電話に出ることにした

 

「もしもし、元気?」

から入るわれらのスタイルは今でも健在で

懐かしく感じるとともになにかイヤなものを感じた

少し会話を進めていくと、昨年籍を入れたそうで

6か月のお子さんも入るらしい。

 

正直、腰が抜けた。

一緒に行ったデートスポットとか、夜な夜なゲームしたこと、ドライヤーで髪の毛乾かしあいながら話したこと、一緒に夜を共にした日のこと

今でも鮮明に覚えているのに。

知らないまま、彼女は大人になってしまった。

幸せな家庭を築いて、子育てして、料理をして、家族のために。

電話越しに聞こえる赤子の泣き声は、必死にお母さんを求めていた。

 

結婚することも子供を育てることもゴールではないし幸せとも限らない

でも、それでも、確実な焦りが存在していた。

”置いて行かれてる”

そう思うには何も難しいことはなかった。

 

人間は家庭を通して自分の自己実現を求める生き物なのか

私にはよくわからない。いい機会だと思って聞いてみた

 

「子供を持って大人になった?」

 

「正直何も変わらないよ。少しは何かが変わると思ってたけど...」

なんだよ、なにもわからないのかよ!なにか教えてくれ!!!

 

「じゃあ、大人になるってどういうことなのよ」

 

「そんなのわかるわけないじゃん!!!でも、私たちが付き合ってた頃よりずっと歳をとって、あの時は23歳なんて大人の中の大人だったけど実際は全然そうじゃなくて...もしかしたら30歳にになっても40歳になってもずっと考えてるかもしれないね!」

 

「そういうもんなのかなぁ...」

 

 

 

 

家庭を持つこと。子供を持つこと。大人になること。

これらはすべて”イコール”ではない

十分条件でも絶対条件でもなくて贋作なものである。

ひとつひとつの概念がすべてではないにしろ意味を持つものだと仮定すれば

9つの答えが見いだされる。

それらをすべて正しく回収するためには

ギャルゲーでいえば、タームが終わるまでひとつのイベントに参加しなければならない。しない限り人生でいえば絶対的な好機を逃すことになる。ハッピーエンドにはなれない。

数学の世界でいえば、もしこの中に実数ではない虚数が入り混じっていたら

”error”それが答え。答えが出せない生徒は不合格。単位も没収である。

 

ワカラナイ。ワカラナイ。生きることってなんなんだ。

 

きっと私もいい会社に就職して美人なお嫁さんをもらって金もジャブジャブあって

会社での立場も社会的地位もすべてが上手くいっててそれが自分の幸せで

脳裏には激しくこびりついてるけど考えないように考えないようにしてた。

それでこそ自分の人生に折り合いをつけて生きていける

生きていく中で邪魔だから。経歴もプライドも邪魔。

 

いつしか誰しもが認める社会で作られた理想的な人間

日々日々何気ない会話の中で作り上げられる最高な自分

それは現実社会にたまに出現して機会を尻尾を出すが掴めるのは優秀な人ばかり

それでも食い下がろうと必死に意気込んで実体のない影を捉えようとするも

結局は虚像だったと知る。

意図的な操作が何回も行われ希望と絶望の狭間で揺れ動いている自分が

阿呆らしくなって自堕落な日々が続く。その日々が"負け組"を作り

社会的に抹殺。終いには自ら自分の手で首を絞める、物理的にも精神的にも。

このエンドレスな不安や悩みで涙が出ることが多く頭を抱えることが多かった。

 

正直、自分に自信がない。希望も夢もやる気も全然ない。

人は自分の想いのままに生きていける。想いの強さがあれば思った通りの自分になれる

だから、強い自分を信じて生きていければ人は本当に強くなれる

どんな思いでも実現させられるって思ってた時期もあった。

でも、こんな世の中で何を目標に生きればいいの?

 

 

想いの丈からあふれ出した言葉は彼女を困らせることもあったが

彼女は最後に助言をしてくれた。

「人生で早いも遅いもないよ。それは社会に出ることでも結婚することでも所帯を持つ子もすべて。人生なるようにしかならないし。そう考えたほうが手持ち無沙汰にはならないし、楽しく生きられるんじゃない?答えなんかないよ。」

 

 

この会話の中で少し気持ちがふわっと軽くなるのを感じた。

生きていく中で答えが出なくてもいいんだな。

私の感じている悩みなんて、きっと答えが出てることばかりなのかもしれない。

でも自分なりに戦ってみてそれが自分の答えの先にある絶対的なものが

見つけられるなら、それはそれでいいんだとふんぞり返ってもいいんだと思う。

 

私は今年で23になる代でもちろん法律でいえば立派な大人だ。

でもまだまだ人間的には未熟で社会にでも出ていないクソガキでバイトでは

毎回店長と喧嘩してやめてるし、親の金で大学に行かせてもらってるし、

いやなことがあったらすぐに逃げたくなるしでダメダメな人生だけど。

はぁ、大人になれなかった大人の男性23歳。万歳。

何とも悲しいな。スミマセンスミマセン。生きていてスミマセン。

 

でも、支えてくれる人がいるお陰でまだ何とかぶら下がって生きて行けそうです。